等々力競技場改修の検討状況説明会について

「等々力陸上競技場の全面改修を推進する会」では、去る2010年8月4日に以下の通り、等々力緑地再編整備検討委員会事務局と会合を持ちまして、等々力陸上競技場改修の最新の検討状況についての具体的な説明を受けました。

■ 日時:2010年8月4日(水) 20:00~22:30
■ 場所:中原区役所 会議室
■ 出席者:
 等々力緑地再編整備検討委員会事務局(以下、委員会事務局)
  ・総合企画局公園緑地まちづくり調整室担当課長  岡 正 様
  ・     〃                 課長補佐  安田 洋信 様
  ・     〃                         新井 雅美 様
  ・建設緑政局緑政部担当部長公園緑地課長(取扱) 大谷 雄二 様
 等々力陸上競技場の全面改修を推進する会(以下、推進する会)
  ・各構成団体代表者

■ 説明要旨 ([推]:推進する会側の発言,[事]:委員会事務局側の発言

(1)第11回検討委員会資料「建蔽率」に関して
[推]「建蔽率の制限上、施設の規模と数に無理がある資料が出ているのでは?」
[事]野球場を等々力緑地外に出したとしてもまだ、陸上競技場とサッカースタジアムの両方を緑地内に入れると建蔽率による制限(12%)を超えてしまうためサッカースタジアムは造れない。第11回検討委員会の際、いろいろな規制条件はさしあたり考えから外してみて案を出してみる、ということでD案(陸上競技場、硬式野球場、サッカースタジアムを配置)も記載された。しかし、そこから野球場を緑地外へ移してもまだサッカースタジアムは入らないという話を、検討委員会でも出せていなかった。

(2)硬式野球場の等々力緑地外への移転について
[推]「例えば川崎球場跡地は、元々そこに大規模野球場が建っていたのだから移転先にできるのでは?」
[事]同球場跡地はアメリカンフットボールができる長方形の施設にする計画がある。平成19年度に市民の意見も募った上で策定された計画なので、簡単には変えられない。
[推]「アメフットを野球場でも行えることは、各大会を野球場で行った実績があり証明されている。陸上競技とサッカーは共存=一つのスタジアムで行い続ける案があるのに、なぜ正方形の球場にしてアメフットと野球の共存は検討されていないのか?」
[推]「アメフットは競技人口も少ない。アメフットも素晴らしいスポーツであることは承知しているが、アメフットを盛り上げてまちづくりに生かすというのなら、なぜアメフットなのか理由を説明してほしい。川崎市と(社)日本アメリカンフットボール協会で協定書を結んでいるというが、ならばなおさら、なぜアメフットと結んでいるのかと感じる」
[推]「硬式野球場の移転先はない、という見解のようだが、どういう検討をしたのか」
[事]等々力球場の大きさは川崎球場とほぼ同じ。野球側からの要望で、より大きいものを造るとすると、入れられる土地がない。
[推]「移転先として、例えば大師球場など現野球場の大規模化は考えたのか? 川崎市内で、競技人口を比べてもサッカーのほうが多いにもかかわらず、野球場自体は他競技に比べてかなりの数がある。市では赤字経営のプールを減らす考えもあるというが、それならなおさら大師など、既存の球場とプールがあるので土地を利用しやすいはず。空き地に入れることだけを考えていたのであれば、検討が足りないと感じる」
[推]「土地がない、というなら、どれかを選択しなければならない。それならば客観的な実情と照らし合わせて考えてほしい。野球にはピラミッド式の統一組織がなく、各グループが個々に占有権を持って各球場を使用している。大規模な硬式野球場のメリットを享受できる人はどれくらいか。軟式野球や他競技と比べても優先すべきものなのか?」

(3)「特区化」について
[推]「建蔽率の制限をクリアするため、特区の検討は行ったのか?」
[事]「入らないから建蔽率を上げて」という前に、硬式野球場、陸上競技場、サッカースタジアムの3つを入れた図を考えてみたところ、かなりギュウギュウに詰められた公園になってしまうイメージが上がった。人が通れるか、入場待ち客の待機スペースが取れるか、災害発生時に混乱なく逃げられるか等の課題を考えてみて、クリアできるのなら、特区の申請を考えようと思っている。
[推]「国は今年の閣議決定で『地域主権戦略大綱』を出した。国の法による縛りを少なくし、地域の実情に合わせた決定を地域が決められるようにする方針を打ち出している。都市公園法、建蔽率についても地域の条例に委任する話がされていることはご存知か?」
[事]承知している。ただしまだ担当省との話が詰まっていないと把握している。法整備がどう進むか分からない。
[推]「法整備の問題ではない。国はすでに閣議決定により方針を打ち出しているのだから、現時点でもできる特区の申請は、通りやすいのではないか?」

(4)次回「等々力緑地再編整備検討委員会」について
[推]「説明を聞いているとA案(第11回検討委員会資料内。陸上競技場と硬式野球場を現位置にて建て替え。着手範囲・規模未定)でいこうとしているように感じる。サッカーも陸上も『シーズン中に使用できるスタジアムがないと困る』と言っているが、では改修と並行して競技も行う案が次回の検討委員会で出される予定か?」
[事]今のところ、一つの案が委員会で出される予定。
[推]「野球場の移転、加えて特区も、まだ検討の余地があると思われる。それらを踏まえた案も出されるべきではないか」
[推]「次回の検討委員会(8月)で、委員会としての結論を出す方向だと聞いている。検討委員会の結論を市はマスタープランとするのか?」
[事]施設の配置は9月に策定される「再編整備基本計画」に載る。検討委員会の結論を元に、市が計画を作る。年度末までに市が関係者の意見も聞きながら施設毎に具体的な計画を作る予定。

(5)スポーツの扱いについて
[推]「検討委員会の資料内でも『緑(植物、池等の自然)』の重要性が強く訴えられている。土地は限られているのだから、緑を増やすのかスポーツ施設を大規模にするのか、どちらかを選択しなければならないのでは?」
[事]例えば、現在の緑地内で再編してなくすものもあるかもしれない。「緑の連続性」と謳っているのは、生態系を考慮すると緑が分断されて存在するのがよろしくないということ。緑地の再編整備に当たり、緑のあり方も「整備」するということ。
[推]「推進する会の署名、請願書等の活動があって、検討委員会が立ち上げられたことは、6月27日の進捗説明会の際に検討委員会事務局も認めていたこと。にもかかわらず検討委員会では、『川崎のスポーツの将来』を考えた資料も議論も少ないのはおかしい。今回、再編整備が決定されたなら今後30~40年は新たな整備は行いがたい。現在、川崎フロンターレの試合には約2週間に1度、約2万人が集まってスポーツを享受している。スポーツを通じて川崎市を盛り立てていく芽と言える。その芽を伸ばさずして潰してしまってもいいのか」

なお、委員会事務局と推進する会との会合については、今後も定期的に実施していくことを確認し、以下の件に対しては、次回までに委員会事務局が調査確認の上、回答することを約束して頂きました。
  ・「なぜアメフットなのか」、他競技と比較しても整合性が感じられる回答
  ・富士見にアメフット等で使用する「長方形の施設」を造らなければならない理由
  ・硬式野球場が等々力緑地から移転できない明確な理由(不足と思われた部分の検討)
  ・「特区」化の検討、詳細情報

等々力陸上競技場改修に関する新たな情報につきましては、当HPにて今後も逐一掲載していきます。

 

■ 出席者コメント

・紀中靖雄 (推進する会 事務局長)
今回、等々力緑地再編整備委員会の事務局と侃々諤々な議論を致しました。様々な角度から議論をしていくうちに、乗り越えなくてはいけない壁もだいぶ見えてきました。その壁を乗り越える為に当会の要望を早急に取り纏めて、今後も行政関係者、市議会議員、関係者などに訴えつづけて参ります。

・山崎真 (川崎フロンターレサポーター)
今回、等々力緑地の今後のあり方についての検討状況も大詰めと言うこともあり、検討委員会事務局の話を伺いましたが、等々力陸上競技場の全面改修については、このままだと我々が期待するものとは全くかけ離れた結論が導かれてしまうのではないかと、強い憤りを覚えました。特に、「D案(サッカー専用スタジアム)」というサッカーのサポーターに対して期待を持たせる案を提示しておきながら、その実現に向けた具体的な調査や検討が全くなされていないばかりでなく、とっくの昔に検討対象から外れていたという回答に対しては、怒りを通り越してもはや呆れるばかりです。我々としては、このような事態に陥った主たる原因を必ずや突き止め、それらを根本からぶち壊すべく、強い意思と毅然たる態度をもって、サポーターという立場から積極的な行動に打って出ます。署名にご協力頂いた皆さんも、今後の動向に引き続き関心を持っていて欲しいと思います。

・加藤渉 (川崎市サッカー協会)
現在行われている「等々力緑地再編整備検討委員会」が立ち上がる前の「等々力緑地利用者等懇談会」の時から、私の所属するサッカー協会という立場を超えて、いろいろな利用団体の方々や行政の皆さんとも意見交換をしてきました。皆さん、所属する団体等は違っても、等々力緑地をもっと使い込みたい、使いやすく身近な等々力緑地であって欲しいという発想から、利用者の目で改善提案を行ってきました。そういう流れと呼応するように等々力陸上競技場の全面改修も訴えてきました。当然、そういう意見を反映させた検討が現在の委員会でなされていると思っておりましたが、残念ながら、行政側の取り纏め方には全くそういう視点が見受けられず、とりあえず見栄えのする資料が作られているというだけでした。それも、詳細に分析すると不備の多い資料である事が判った時には、呆れるというより腹立たしさも感じております。言い訳ばかりする前に、ぜひ汗をかいて、本当に市民が、利用者が、臨んでいる等々力緑地を作りましょう。当然、我々も一緒に汗をかきますので!

・庄子千賀夫 (川崎市陸上競技協会)
陸上競技場の改修工事については、メインスタンド及び写真判定室の改修工事、また、競技場内の室内練習場を設けてもらいたいが、サッカーチーム・Jリーグ川崎フロンターレの協力がなければ改修工事はできません。できれば、2つの専用競技場を造るのがベストだと思います。それには、野球場周辺の整備、改修工事が必要です。
川崎市内には、大規模の大会をする陸上競技場及びJリーグサッカー競技場は1つしかなく、野球場は、他にもたくさんあるので、整理すれば大きな球場ができると思います。例えば大師公園周辺及び旧川崎球場を整備してはどうですか。
陸上競技場は小学校、中学校、高校、一般、障害者等が使用しています。大会には大勢の人が来場するため、トイレ、雨・風をしのぐ場所がなければ大会運営はできません。ぜひ、2つの専用競技場を建設してもらいたい。切にお願いします。

・岩永修幸 (川崎フロンターレ)
『スポーツのまち・かわさき』の将来を考える際、ありがたいことに、「フロンターレが牽引車となりスポーツの地位や人気を高めることで、川崎市の将来を拓いていこう」というご意見を多くいただいています。現在の競技場の構造や周囲の状態では、キャパシティいっぱいのご来場者を十分な観戦環境で受け入れることは、恐縮ながら困難と言わざるを得ません。フロンターレに心を寄せてくださる方々のため、川崎市のスポーツのため、ご来場の皆様に喜んでいただけるスタジアムとなるよう要望し続けます。ひいてはそれが、川崎のまちづくりにもつながるものと信じています。

以上